The Cheserasera "dry blues tour" 10月29日(日) 東京 下北沢CLUB Que
自主レーベルからの初音源を引っ提げ、満員御礼のツアーファイナル

(文:イシハラマイ)
10月29日、東京・下北沢CLUB QueにてThe Cheseraseraが「dry blues tour」のファイナル公演を開催した。
夏にメジャーからインディーズに戻って活動することと、自主レーベルの立ち上げを発表した彼ら。新アルバム『dry blues』は、その自主レーベルからの第一弾リリース作となる。
楽曲のみならず、ジャケット写真やMV制作にもメンバーが積極的に関わり、いわば“手作り”でアルバム制作を行った。それゆえ、メンバーが作品にかける想いも一塩だ。
そんな自信作を引っ提げ全国を周り、発売から約3ヶ月、ようやくホームタウンである東京に、The Cheseraseraの3人が帰ってきた。

毎度お馴染み、ドリス・デイの「Que Sera, Sera」と共にステージに登場したメンバーを、超満員の観客たちが拍手で出迎える。
そう、この日はバンドにとって待望のソールドアウト公演となっていた。新たな門出を迎えた彼らにとって、これほどの祝福はないだろう。
ゆっくりとミラーボールが回り、始まったのは「good morning」。
柔らかなアンサンブルと宍戸の優しい歌声が、のびのびと響き渡る。
アルバムを聴き込んで来たであろう観客たちも、作品の最後を締めくくるこの曲でのスタートは、予想外だったのではないだろうか。正直、私も驚いた。
今までの彼らなら、1曲目はもっと勢いのある曲で弾みをつけ、ステージを始めたと思う。それで演奏がこなれてきた段階で、穏やかな曲調へとシフトする。
しかし演奏が始まった瞬間、これが今の彼らに相応しいスタートの切り方なのだとすぐに理解した。
美代一貴(ドラム)が作り出す多彩なリズムの上を、宍戸のギターと歌が、そよ風のようにさらさらと流れてゆく。
こういったThe Cheseraseraのミドルナンバーの妙は、耳触りこそ穏やかだが、芯にロックバンドとしてのグルーヴ感があることだ。
それが曲に深みを与え、心地良いけれども聴き応えのあるサウンドが成り立つのだろう。
アップテンポな曲ならば、多少荒削りでもそれが味となることもなるだろう。しかし、こういった曲調の場合はそうは行かない。
単純にアンサンブルと歌の真価が問われる。だからこそ、この曲で始めることは、自信の表れのように感じたのだ。

「本日は足元の悪すぎる中、ご来場いただきありがとうございます!」と宍戸がMCで口にした通り、当日は台風の影響で生憎……というか相変わらずの豪雨に見舞われた。
トラブルと豪雨はツアーのお約束になりつつある彼ら。思わず宍戸からは「逆境飽きた!」なんて言葉が飛び出したほどだ。
しかし、そんな状況でもバンドを続けて来られたのは、その度に応援してくれる人がいて、逆境と同じくらい良いことが返ってきたからだと、彼は続けた。
バンド活動は、CDを買って、ライヴに足を運んでくれる人なくしては成り立たない。それは言わずもがなだ。
でも、その背景にはどんな逆境に見舞われても、決して下を向かなかった彼らのひたむきさと、バンドや音楽への愛があるのだと思う。
逆境に見舞われた時こそ、人任せにせず、メンバー自らバンドの舵を取り、乗り切ってきた。そのことが3人の結束を強くして、より緻密なアンサンブルを生み出すに至ったのだろう。

そして活動が主体的になるにつれ変化してきたのは、演奏だけではない。もうひとつの大きな変化、それはバンドのソングライターでもある宍戸の書く歌詞だ。
中でも「Blues Driver」は特に多くの共感を呼んでいる。
大学時代、就職を機にバンドを辞める友人から、“ブルースドライバー”という名前のギターのエフェクターを譲り受けた宍戸。
その思い出が元になり、この詞は生まれたのだという。「全ての青春と、バンドを辞めた友達に、この歌を捧げます」そう告げてから曲を始めた。
Aメロ、Bメロ、サビ、と3人の演奏は極限まで熱を高めてゆく。
その熱を一身に吸い込んで吐き出すように〈君に譲ったブルースドライバー 鳴れ 鳴れ〉と叫び、ギターを掻きむしるようにソロを弾く宍戸の姿は、胸に迫るものがあった。
バンドマンによるバンドマンのためのアンセムは、今までも数多くのバンドが歌ってきた。
しかしこの曲は、宍戸個人の想いが投影されながらも、夢を追う人、そして夢を諦めた人すべてに贈る曲になっている。
『dry blues』の収録曲の中で一番穏やかな曲「フィーリングナイス」直前のMCで宍戸は自らの歌詞を「決して華やかじゃなくて、どちらかと言えば地味」だと語った。
誰かの背中を押すことさえ、しないのだと。
だけど、自分で前を見て歩くための手助けにはなれる、心に青い炎を灯せるような音楽。それがThe Cheseraseraの音楽なのだと、宍戸は言う。
おしつけがましい共感ではなく、そっと黙って隣に寄り添ってくれるような感覚。これは彼らの曲が、ずっと昔から守ってきた距離感だった。

『dry blues』の収録曲を中心に、ミドルナンバー多めで構成した序盤から中盤を経て、終盤はアップテンポの曲が並んだ。
するとおもむろに宍戸が「つかぬことをお伺いしますが!皆さんはクソみたいな恋愛をしたこがありますか?」と、叫ぶように問いかける。
そのまま「たとえば僕は嘘くさいラヴ・ソングが嫌いだ!」と言い放ち、「I Hate Love Song」へとなだれ込んだ。
バンドの初期を思わせるようなザラつきと苛立ちに溢れたロックチューンに、フロアからも拳が突き上がる。
そしてラストサビの手前、いつもなら宍戸がシニカルに吐き捨てる〈笑わせんなよ〉の決め台詞をこの日担当したのはなんと観客たち。
皆して、日ごろの鬱憤を晴らすかのように、ここぞとばかりに〈笑わせんなよ〉!と叫ぶ光景は壮観だった。
実はこの部分、曲が始まる前に宍戸が、嫌なことを思い出して思いっきり叫んで欲しいと観客たちにリクエストしていたのだ。
愛ある罵声を浴びたステージは更に勢いをつけ、ラストまで豪快に駆け抜けてみせた。

宍戸の「ワンツー!」の掛け声で始めた「春風に沿って」では、軽快なリズムに合わせて観客が手拍子。
本編のラストは焦燥とろくでもなさを詰め込んだ、バンドの代表曲「月と太陽の日々」が飾った。
1曲目やラストなど、今までもセットリストの大事なところで幾度となく披露されてきたこの曲。
それゆえ、アンサンブルが馴染んでいなかったり、熱が入りすぎて荒削りになったりと、勿体ない演奏になることが多かったのもまた事実だ。
しかしこの日は、ラストナンバーに相応しいテンションのまま、歌も演奏も一切のぬかりなくやりきってみせた。
美代は立ち上がってスティックを鳴らし、西田裕作(ベース)はここぞとばかりにベースを唸らせ、宍戸の巻き舌も絶好調。
バンドは生き物、なんて良く言うけれどThe Cheseraseraほどその進化が目ざましいバンドを、今だかつて見たことがない。

アンコールの「消えないロンリー」は同期を取り入れ、キラキラとした音色が美しかった。そして見せ場は勿論、間奏のベース。
表現力豊かで骨格のしっかりとした西田のベースラインは、ロックチューンも然りだが、こういったミドルナンバーでも存在感抜群だ。
最後は旅立ちの歌、「Drape」を高速で鳴らして、「dry blues tour」は幕を閉じた。
宍戸も言ったように、このバンドは逆境の連続だ。しかし、不思議と悲壮感がない。それは、彼らが語る言葉や音楽に、いつもほんのりと希望の灯りがともっていたから。
そして、もっと良い音楽を作りたいと願う音楽家としての欲が、メンバーそれぞれにあったからだろう。決して“なんとかなるさ”と気楽にやってきた訳じゃない。
でも、今の彼らならどんな逆境に見舞われても、自信を持って“なんとかするさ”と言ってくれそうな気がする。そんな頼もしさを感じるのだ。

12月22日には同会場にて追加公演が行われる。
こちらはライヴ中にアナウンスがあったとおり、ツアーとは一味違ったセットリストになる予定だ。
ツアーを終えた彼らが、次にどんな音を鳴らすのか。楽しみに待っていよう。


<10月29日(日)下北沢CLUB Que・セットリスト>
1.good morning
2.LOVELESS
3.Youth
4.うたかたの日々
5.賛美歌
6.BLUE
7.Yellow
8.心に抱いたまま
9.カサブランカの花束
10.フィーリングナイス
11.You Say No
12.Blues Driver
13.I Hate Love Song
14.春風に沿って
15.ファンファーレ
16.Lullaby
17.月と太陽の日々
18.消えないロンリー
19.Drape
LIVE PHOTO
2017.10.29 CLUB Que by 釘野 孝宏









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